海外特派員たちが官僚から聴きたいと思っていた論点はいくつもあった。エネルギー政策、アベノミクスのリスク、改憲、若者への機会提供、地方の過疎化などなど。しかし、これらの問いについて海外メディアの取材を快く受けてくれた政府代表者はほとんど一人もいなかった。そして誰であれ首相の提唱する新しい構想を批判するものは「反日」(Japan basher)と呼ばれた。
5年前には想像もできなかったことは、外務省からの攻撃だった。それは私自身への直接的な攻撃だけでなく、ドイツの編集部にまで及んだ。
安倍政権の歴史修正主義について私が書いた批判的な記事が掲載された直後に、本紙の海外政策のシニア・エディターのもとをフランクフルトの総領事が訪れ、「東京」からの抗議を手渡した。彼は中国がこの記事を反日プロパガンダに利用していると苦情を申し立てたのである。
冷ややかな90分にわたる会見ののちに、エディターは総領事にその記事のどの部分が間違っているのか教えて欲しいと求めた。返事はなかった。「金が絡んでいるというふうに疑わざるを得ない」と外交官は言った。これは私とエディターと本紙全体に対する侮辱である。
もしこれが日本の新しい目標を世界に理解してもらうための新政府のアプローチであるとしたら、彼らの前途はかなり多難なものだと言わざるを得ない。
日本の政治的エリートたちの内向き姿勢と、海外メディアとオープンなディスカッションを避ける政府高官たちの無能はいまのところ報道の自由に影響を与えるほどには至っていない。それに、情報を集めるためにはそれ以外にいくらでも方法がある。それでも、民主制においては、政策を国民と国際社会に対して説明することが、どれほど重要であるのかを安倍政権がよく理解していないということはあきらかである。
海外特派員の同僚たちから自民党は広報セクションに英語を話せる職員を配置していないとか、外国人ジャーナリストには資料を提供しないとかいう話を聞いても、私はもう驚かなくなった。海外旅行が多いことを自慢している現在の首相が海外特派員協会で私たちを相手にスピーチするための短い旅についてはこれを固辞していると聞いてももう驚かなくなった。ただ、私の気持ちが沈むのは、この政府が海外メディアに対して秘密主義的であるだけでなく、自国民に対しても秘密主義的であるからである。
私の望みは外国人ジャーナリストが、そしてそれ以上に日本国民が、自分の思いを語り続けることができることである。社会的調和が抑圧や無知から由来することはないということ、そして、真に開かれた健全な民主制こそが過去5年間私が住まっていたこの国にふさわしい目標であると私は信じている。
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