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のぼみ~日記 2020

2020/04/29

ウィズコロナ、アフターコロナ

 世界同時に未曽有の困難に直面しています。この時期を無駄に過ごした人と、何か一つでも、自分の中でまとまった努力ができた人との間には、間違いなく違いが生まれるでしょう。
 第1のポイント「青春の数年をいかに過ごすか」という問いへの私からのエールは、教養を強化し、人間としての幅と魅力を増やし、専門の力を一つひとつ身に着けてほしいということです。
 学生がキャンパスで身に着けるべきオーソドックスな「本分」を大切にしてほしいと思います。
日本を衰退させる低識字率世代出現の恐怖 今をどう過ごすかであなたの未来は決まる  伊東 乾

これはなかなかよい文章だった。
この筆者は東大の物理学科を卒業しながら音楽家であり、大学で教えてもいるらしい。10歳年下か~。

この人に限らず、最近では「コロナと一緒に生きる」「コロナ後の世界を生きる」という話をする人が増えてきた。
「高齢者」にはどちらの時間もあまり長くはないし、いつ死んでもおかしくないのであまり深く考えてストレスを溜め込むよりは、自分の生活をいかに壊さないかをゆったり考えたいところだが、子供たちや若者世代にとっては深刻な問題だ。

2020/04/30

野良猫?とのぼる


気持ちよく晴れた。ネコどもを連れてかわず庵にちょっとお散歩……と思ったら、塀の上に野良猫が頑張っていた。
のぼるくん、さかんに威嚇するも腰が引けている。野良?のトラは泰然自若。のぼるくんの負け~。
引っ張って引き離したが、のぼるくん、去り際に大量のおしっこを思いっきり後方に飛ばしていた。


泰然自若。のぼるくんを完無視の野良トラ



オオカミ池の縁に、今年もリュウキンカが咲いた。どっちもリュウキンカかな?



そばにはヒトリシズカも



チビ池にいたトウキョウダルマガエル。まだパラパラとしか集まってこない。

プチ池の後ろはゼンマイですかね



「ヘ池」の縁にはアマガエル


今井信郎という人物


義母が亡くなった後のもろもろの手続きをしているが、コロナのせいで実家に行けず、後片づけができない。
義母は自分が幕臣・今井信郎(のぶお)の子孫だということをずっと隠していて、助手さんも数年前に初めて聴かされて驚いたという。

義母が持っていた写真。左が今井信郎。右は妻の「いわ」
今井信郎は「龍馬を伐った(のかもしれない)男」として有名だ。
だが、本人にしてみれば龍馬殺害事件は激動の時代の中の一コマに過ぎず、単に「幕臣として、上からの命令に従った」だけのことだっただろう、というのが子孫である今井幸彦(さちひこ)氏の見解。
それはそうだろうな、と思う。京都から函館まで戦い抜いた戊辰戦争では何度も命を落としかけ、降伏後は斬首覚悟で劣悪な牢屋生活を続け、再び外の世界に出てからは静岡の山奥で農民として開墾作業をする傍ら、地元の若者たちへの教育活動に没頭し、キリスト教の洗礼を受けて、村長になって……という人生。「激動の」という惹句が色褪せるほど凄まじい人生の中においては、「龍馬? ああ、そんなこともあったな」というのが素直な印象だろう。
今井幸彦氏の今井信郎伝は、取材源の記述もていねいな上、今までなかった推論も(推論にすぎないと断った上で)いくつも書かれていて、それがまた非常に興味深い。特に、今井信郎がなぜ釈放されたのかという謎のあたり。
先日、最初に買った似たようなタイトルの小説もどきは、こうしたていねいな検証を適当にパクって適当に書いた浅いものだ、ってこともよく分かった。
時代小説を書く責任っていうことを、思い知らされる。小説『神の鑿』は、やはり小松利平の生涯だけで終わらせておいたほうがいいかな、と改めて思った。
利平は謎だらけの人物なので、想像を膨らませる作業が楽しかったが、寅吉や和平の時代に入ると、かなり人物像がリアルに浮かび上がってきて、「想像で書きました」では無責任なことになる気がする。人脈や思想の面でも、検証できないことがいろいろある。しかし、それを書かないと、たとえ小説であっても意味がない。チャンバラ時代劇ではないのだから……。

……閑話休題。
要するに、司馬遼太郎の小説のせいで坂本龍馬という人物が突出してヒーローに仕立て上げられてしまったために、近代史として非常に重要な幕末~明治にかけての歴史検証が歪められているということは否定できないだろう。
小説『神の鑿』を書く際にもいろいろ調べて、江戸末期から明治にかけての歴史観が一変したのだが、今回、義母の祖先である今井信郎の生涯を知ることで、さらに有名な登場人物へのイメージが変わった。
龍馬はフリーメイソンリーだのなんだのという話もよく聞くが、それも「フリーメイソン」という言葉の魔力?に振り回されているだけ。実際には公武合体を軸にして諸外国に対して力をつけた新生日本を作ろうとして暗躍したフィクサー。自分の思い描く未来図を実現するためには手段を選ばず、という考えで、それをイギリスに利用された。
龍馬が邪魔になったのは幕府のトップではなく、薩長の武力制圧派だっただろうという推論は、その後の歴史の流れを見ても説得力がある。

西郷は、豪放磊落というイメージで描かれることが多いが、実際は陰湿で冷酷な面も持ち合わせていた策士だったのだろう。決断が早く、大胆な行動に出る実行力やカリスマ性を持つ一方で、ねちこく、ずるい面も合わせ持つ。江戸市中での放火・略奪などの攪乱作戦を命じ、実行部隊が邪魔になるとさっさと切り捨てたり、征韓論を展開したりといった事実がある以上、とても「英雄」視する気にはなれない。

勝海舟なんかも、頭はいいのだろうが、うまく立ち回れるお調子者だよなあ、と思う。

ちょっとしたことで、歴史はガラリと変わってしまう。
龍馬が生き延びていれば、明治新政府の中で有能な政治家として活躍したかもしれない。
でも、そうなる前に、「邪魔だから消せ」と思う者たちはいっぱいいた。薩長の中にも、諸外国の政治家にも。
歴史をガラッと変えてしまう「ちょっとしたこと」を決定づける何か得体の知れない力が存在しているのか、とも思う。

それはそうと、今井幸彦氏の本には、義母の母である「てる(照)」さんのこともちょこっと出てくる。
長女りゆうの娘照が、事情あって実家が預かることになり、唯一の若やいだ声となった。(p268)
義母の話では、てるさんは一旦医者の家に嫁いだが、医者の家風が合わずに離縁されて出戻り、その後再婚。再婚相手との間に5人の子供をもうけた後に若くして他界。その5人の子の末っ子が義母だそうだ。
だから、義母には母親・てるの記憶はあまりなくて、むしろ祖母にあたるりゅうばあさんの印象のほうが強く残っていたらしい。「私は武士の娘です」が口癖の、とにかくおっかない人だった……と。

義母は今井信郎の長女・りゅうの孫にあたる


前列真ん中が今井信郎の長女・りゅう。後列右から二人目が「てる」で、てるに抱かれている幼子が義母


私の母方の祖先が神戸開港事件で謹慎・蟄居処分になった老中・阿部正外の娘、助手さんの母方の祖先が戊辰戦争を最後まで戦い抜いた幕臣・今井信郎の娘。
二人とも母方の祖先が幕末、戊辰戦争で新政府軍と戦い、降伏した人物だったことを、僕らは歳を取ってから知った。
それもきっかけで、私は今になって日本の近現代史を勉強している。
教育は大切だなあ、と思う。

ちなみに、著者の今井幸彦氏は大正7(1918)年生まれで、太平洋戦争が勃発した昭和16(1941)年に東京帝国大学文学部を卒業。共同通信社勤務。昭和56(1981)年没。今の私より若くして亡くなったのだなあ。
もっと長生きしてくれていれば、話す機会もあったのかなあ……いや、無理か……。若い頃の私は、日本史になど興味がなかったしね。

でも、彼の書き残した文章は、今も生きていて、こうして私に影響を与えている。
今井信郎がどういう人物だったか、ということにとどまらず、歴史の読み方、資料の読み方、それをどう分析し、考えるべきかという「姿勢」について教わった気がする。

小説・神の鑿 ─高遠石工・小松利平の生涯─

「神の鑿」石工三代記の祖・小松利平の生涯を小説化。江戸末期~明治にかけての激動期を、石工や百姓たち「庶民」はどう生き抜いたのか? 守屋貞治、渋谷藤兵衛、藤森吉弥ら、実在の高遠石工や、修那羅大天武こと望月留次郎、白河藩最後の藩主で江戸老中だった阿部正外らも登場。いわゆる「司馬史観」「明治礼賛」に対する「庶民の目から見た反論」としての試みも。

B6判 250ページ オンデマンド 1280円(税別) 送料:220円
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