新型コロナウイルスで世界中がおかしくなって2年以上が経過した。
当初言われていたことのうち、
- 空気感染はしないので、接触感染がいちばん怖い
- マスクは簡単にウイルスを通すのであまり意味がない
- ウイルスは弱毒化に向かって変異する
……といったことは、今では当たっていなかったと分かってきた。
- 接触感染はほとんどなくて、ほとんどは飛沫感染である
- それを防ぐのには不織布マスクの着用が最も現実的かつ効果的である
- ウイルスの変異は次々に起こっているが、弱毒化どころか感染率も重症化率も上がる傾向にある
……これが現在のところは新常識になっている。
しかし、変異株の動きやワクチンの効果、安全性については、分からないことだらけで、日々情報が更新され、一喜一憂している状態。
大阪はインドより死者が多い、は本当か?
最近、「大阪のCOVID-19死者数はインドより多い」という発言が話題になった。確認したら、大阪府のCOVID-19による累計死者数は1901人(5/14時点)で、人口100万人あたりにすると約215人。インドは191人。確かに「インドより多い」とは言える。
ちなみに、5月8日時点ではそれぞれ192人対174人だったから、どちらもここ6日間で一気に増えている。
↑大阪府のCOVID-19死者数の推移。NHK提供
インドの死者数は一桁違うのではないか、などとも噂されているので、正確なところは分からない。しかし、
一旦医療崩壊すると、一気に死者数が増えるということは間違いない。COVID-19以外の病気や怪我の対応ができずに、平時なら助かった命がどんどん消えていっていることも事実だ。
で、「インドより多い」という表現は、インドはCOVID-19死者数が飛び抜けて多い国だというイメージのもとで語られるわけだが、実際にはインドの人口あたり死者数は世界100位前後で、「飛び抜けて死者が多い国」とは言えない。
しかし、現在のインドの死者数増加スピードは凄まじい。
死者の平均報告数は世界最多で、世界で報告される1日の死者の約2人に1人の割合を占めるという。また、インドは感染者数はやや減少傾向になっているようだが、ネパール、日本はなかなか下がらない。(
ロイターCOVID-19 TRACKER)
ちなみに人口300万人以上の国の、人口100万人あたりのCOVID-19死者数順位は、
ハンガリー(2957人)、チェコ、ボスニア、ブルガリア、北マケドニア、スロバキア、ベルギー、スロベニア、イタリア、ブラジル、ペルー、イギリス、ポーランド、クロアチア、アメリカ、スペイン、メキシコ、ポルトガル、フランス、ルーマニア、コロンビア(1507人)……の順。
多くの日本人はイメージできていないと思うのだが、
東欧諸国がものすごく多い。
インドの191人は欧米諸国より1桁少ない。日本は89人でインドの半分くらいということになっているが、どちらも隠れコロナ死がかなりいるだろう。
数字のとらえ方、伝え方は難しいと改めて思うが、インドはアジア、オセアニア圏諸国の中では死者数が相当多いことは確かだ。しかも、累積ではなく、現在急激に増えているという点が問題なのだ。
ちなみに、韓国は37人、オーストラリアは35人、タイは8人、ニュージーランドは5人、台湾は0.5人、ベトナムは0.4人……で、
アジア、オセアニア圏の国では日本の死者数は非常に多い。
「日本は欧米諸国に比べて非常に少ない」ではなく「
アジア諸国の中ではインド、インドネシア、フィリピン、ネパールの次に多く、韓国の倍以上、香港の3倍以上、台湾の180倍以上の割合で死者が出ている」と伝えるのが正しい。
また、ここ数日で急激に死者・重症者が増えている。都市への人口集中が著しい日本では、都市部で医療が逼迫するとたちまち死者・重症者は増えるだろう。

人種的には欧米型のオーストラリアやニュージーランドで感染が抑えられているのは、島国という特質を生かして水際対策を徹底したからだ。同じ島国の日本はそれがユルユルだった結果、もはや手遅れ状態になってしまっていることも、メディアはしっかり伝えなければならない。
モンゴルの今後に注視
また、最近の動向で気になったのは、昨年まで死者数ゼロだったモンゴルが、ここにきて突然、感染者数も死者数も増え始めたことだ。


モンゴルが今までCOVID-19での死者ゼロだったのは、草原地帯などが多く、人口密度も低い国内にウイルスが入ってきていなかったからだろう。それが一気に感染が広がったことの背景には、何らかの変異株が入ってきて、今までの均衡を破ったのではないかと疑う。同じモンゴロイド系人種の国でのことだけに、今後どうなっていくのかが非常に気になる。
モンゴルは感染者が出てきた今年2月から急遽ワクチン接種に乗り出し、急ピッチで接種人口を増やした。上記データによれば、目下人口100人あたりの接種回数は72.8回で、アジア圏諸国の中でも断トツトップである。そのため、感染者数は減ってきているが、今後、もし感染者数や死者数が下がりきらずにあるレベルでダラダラ続くとしたら、日本にとっても大きな不安材料になる。
ワクチンを巡るドタバタ劇の実像
メディアの「ワクチン待望論」的な煽りや視点の持ち方も相当おかしい。
ワクチンについては、多くのことがまだ未解明であり、
副反応や将来にわたっての影響がよく分からないまま打っている「見切り発車」であることは間違いない。
毎日数百人、数千人単位で死者が出ているような国・地域では、とりあえずワクチンでなんとかしろ、となるのは仕方がないだろう。しかし、当初から死者の割合が極端に低かった東アジアでは、まずはウイルスの侵入を防ぐ、感染を広げずに抑えるというやり方が先だったはずだ。
実際、他の国々はそれに概ね成功している。台湾などは見事なお手本だ。
台湾でCOVID-19での死者は100万人あたり0.5人、日本は同・91人で182分の1(
worldometers.infoのデータより)だが、ワクチン接種率を比較すると、5月13日現在、台湾は100人あたり0.5回であり(
日本経済新聞社作成のデータより)、日本の同・4.4回のおよそ10分の1である。
アジア・オセアニアの国々を人口あたりのCOVID-19死者数の少ない順に、100人あたりワクチン接種回数を併記して並べてみると、
国:100万人あたりの死者数、100人あたりの接種回数
- ベトナム:0.4人、0.9回
- 台湾:0.5人、0.5回
- ブータン:1人、63.1回
- 中国:3人、25.3回
- シンガポール:5人、55.0回
- ニュージーランド:5人、7.9回
- タイ:8人、2.9回
- 香港:28人、24.4回
- オーストラリア:35人、11.1回
- 韓国:37人、8.6回
- マレーシア:58人、5.9回
- ミャンマー:59人、3.3回
- モンゴル:62人、72.8回
- 日本:91人、4.4回
- ネパール:169人、8.6回
- フィリピン:173人、2.4回
- インドネシア:174人、8.3回
- インド:197人、12.9回
(↑青字は日本よりワクチン接種率が低い)
……となって、日本はやはり下から数えたほうが早い。
しかし、よく見ると感染防止対策を絶賛され、実際に死者数も100万人あたり0.5人しかいない台湾が最下位なのだ。
日本が100人あたり4.8回なのに対して台湾は0.8回。5分の1以下である。
それなのに
100万人あたりの死者数は日本が91人に対して台湾は0.5人。
日本は台湾の182倍である。
台湾やモンゴルは今までほぼ完全に感染を押さえ込めていたが、ここにきて、おそらく変異株の影響があるかと思うが、急に感染者、死者が出てきたため、急遽ワクチン接種政策を進めている。
ワクチン接種率と死者数は比例していないように見えるが、上記の死者数はワクチン接種が始まる前からの累積数で、ワクチン接種開始前に医療崩壊などで一気に死者が出たケースが多いだろうから、
累積の死者数との比較ではなく、今後の動向を注視しなければならない。
現役の医療従事者がワクチン接種後に急死している
ワクチンを巡るドタバタについては、いろいろな問題が指摘できるのだが、一番気になるのは
安全性についての情報発信が頼りなさすぎることだ。
頭痛や倦怠感といった副反応はほぼ「ある」と思っていいようだが、その情報がほとんど出てこない。
仕事を休めない人やプロアスリートなどにとっては、たとえ数日間のことであったとしても重大な問題だ。
接種後に急死した人が若い人も含めてすでに二桁いることも、あまり報道されていない。個別のケースが地方紙で散発的に記事が出るだけで、全国紙やテレビが包括的に報道しているのを見たことがない。
厚生労働省は5月12日、「
新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要」として、「令和3年2月17日から令和3年5月2日までに報告された死亡事例は計 28 件となった。なお、上記に加え、令和3年5月3日から令和3年5月7日までに、医療機関又は製造販売業者から死亡として報告された事例が 11 件あった。」と報告した。
つまり、
厚労省が把握しているだけで5月7日までに39件の死亡例があった。

画像は厚労省発表のデータより
厚労省が公開している
「新型コロナワクチン(コミナティ筋注、ファイザー株式会社)接種後に死亡として報告された事例の一覧(令和3年2月17日から令和3年5月7日までの報告分)」から60代以下の死亡例だけ拾ってみると……、
- 61歳 女 2021年2月26日接種 3月1日死亡 基礎疾患なし 死因:くも膜下出血
- 46歳 男 2021年3月19日接種 3月20日死亡 基礎疾患なし 急性大動脈解離心タンポナーデ
- 26歳 女 2021年3月19日接種 3月23日死亡 基礎疾患なし 脳出血(小脳)、くも膜下出血
- 69歳 女 2021年3月17日接種 3月26日死亡 基礎疾患なし 脳出血
- 65歳 男 2021年3月9日接種 3月28日死亡 基礎疾患不明 急性心不全(心臓死以外の原因となる所見なし)
- 62歳 男 2021年4月1日接種 4月2日死亡 基礎疾患不明 風呂場で溺死
- 51歳 男 2021年3月25日接種 4月8日死亡 基礎疾患なし 心室細動
- 37歳 男 2021年4月5日接種 4月8日死亡 基礎疾患花粉症 死因不明
- 55歳 男 2021年4月17日接種 4月19日死亡 既往症高血圧など 急性心筋梗塞
- 44歳 女 2021年4月21日接種 4月25日死亡 基礎疾患なし くも膜下出血
- 45歳 女 2021年4月21日接種 4月26日死亡 基礎疾患なし 死因不明
- 40歳 女 接種日不明 2021年4月26日死亡 死因不明
- 26歳 男 2021年4月28日接種 5月3日死亡 基礎疾患片頭痛 死因不明
- 63歳 女 2021年4月30日接種 5月3日死亡 基礎疾患なし 死因:脳底動脈瘤破裂、くも膜下出血
- 51歳 女 2021年4月23日接種 5月7日死亡 基礎疾患:肺胞低換気症候群、肥大型心筋症、肺高血圧、腎不全(透析中)
- 69歳 男 2021年4月29日接種 5月7日死亡 基礎疾患:大動脈解離、前立腺がん 死因:胸部大動脈解離
……となる。
その後も、
愛媛県は5月13日、医療従事者の50代女性が新型コロナウイルスのワクチン接種後に死亡したと明らかにした。2回の接種を受けたが、心不全や呼吸困難など副反応が疑われる症状があったという。(新型コロナ ワクチン接種後に50代女性死亡 医療従事者 副反応疑い症状あり 毎日新聞 2021/05/14)
長崎県は13日、医療従事者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの優先接種を受けた60代女性が、接種から数日後の今月上旬に死亡したと発表した。死因は脳底動脈瘤(りゅう)破裂とくも膜下出血で、現時点でワクチン接種との因果関係は不明。医療従事者の接種後の死亡確認は、県内で2例目。(ワクチン接種から数日後に死亡 長崎県の60代医療従事者 西日本新聞 2021/05/13)
新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、神奈川県は14日、県内でこれまでに接種後に3人が死亡したと明らかにした。(ワクチン接種後、神奈川で3人死亡 2人の因果関係を分析中 神奈川新聞 2021/05/14)
三重県は14日、県内で新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた40代女性が接種から5日後の今月2日に死亡したと発表した。(新型コロナワクチン 40代女性、接種後に死亡 因果関係は不明 伊勢新聞 2021/05/15)
……など、ここ数日だけでも、現役医療従事者を含むワクチン接種後死亡例が次々に報告されている。
65歳未満の死亡例はほぼ全員が現役の医療従事者だろう。つまり、健康体で毎日医療機関で働いていた人たちである。
わずか2か月あまりで健康体の現役医療従事者がワクチン接種後にこれだけの人数急死していることをどう捉えればいいのか。
二桁の急死例は「無視できる範囲」なのか?
これに対して、「現時点で医療従事者や高齢者などに行われたワクチン接種は合計400万回以上。接種後に死亡したのが39人なら、数百万人のうちの数十人だから無視していい」という論法がよく聞かれる。
厚労省も、2021年4月9日に公開した審議会資料の中で、「ワクチン接種後の出血性脳卒中死亡率は、0.12件/100万人・日であり、一般人口における出血性脳卒中死亡率0.97件/100万人・日と比較すると少ないので、問題ない」という論旨を記載している。
しかし、これはおかしいだろう。
ワクチン接種後に急死した人の中には現役の医療従事者が数多く含まれているのだ。病人や高齢者も含めた一般人口での出血性脳卒中の死亡率と比較するのは適当ではないのではないか。
厚労省が2021/04/09に公開した審議会資料より。
インフルエンザワクチンの接種後の副反応疑いの死亡例と比較するなら分かる。これは過去10年以上にわたって、年間0件~4件程度である(
厚労省「インフルエンザQ&A」より)。
さらには、新型コロナワクチン接種後に死亡した人の数は、厚労省に報告されている数十例がすべてではなさそうだ。
3月20日死亡の46歳の男性は旭川赤十字病院の事務職員である。3月19日に接種したが、翌20日に体調が急変し死亡。しかし、死亡原因がワクチン接種との関連性が証明できないとして、
当初は報告されていなかった。それを、遺族が「報告してほしい」と要望し、4月になってから報告された(接種後に死亡、報告悩む医療機関…遺族は「国に伝えて」2021/05/09 読売新聞)。
他にも
報告されていないケースがあるのではないだろうか。
さらには、これは
死亡例だけであり、重篤な状態に陥ったケースは入っていない。数百例あるようだが、そのデータもあまり報じられていない。
ワクチン接種後に重篤な状態になった人をしっかり病院が受け入れて治療できる体制が整っているのか、余裕があるのかも不安である。
打ちたくない人の人権を守れ
COVID-19感染での死者の年代別割合では、依然として若年層は低く、10代以下はほぼゼロである。


(画像は日本経済新聞社作成より)
それを踏まえると、若年層がワクチンを打って具合が悪くなったり、最悪死んでしまう確率と、ワクチンを打たずにCOVID-19になって重篤化したり死んでしまう確率と、どちらが高いのか……と疑いたくなる。
医療従事者がワクチン接種後に死亡した例では、40代、50代の女性が比較的多いように見える。
現段階で医療従事者で2回のワクチン接種を終えた割合は25%くらいらしいが、現場を知る医療従事者ほどワクチンの副反応には不安を抱えているのではないだろうか。しかし、口には出せないし、接種を拒否すると同調圧力で職場に居づらくなる。ただでさえ過労働でストレス漬けの日々に、ワクチンストレスも加わって悲惨なことになっているのではないかと危惧する。
政府や厚労省は高齢者へのワクチン投与をとにかく急がせていて、まだワクチンが1箱も届いていない自治体にまで「7月末までに高齢者へのワクチン投与を完了させよ」と圧力をかけている。
新型コロナウイルスの高齢者へのワクチン接種をめぐる国の全国調査で、「7月末に完了できない」と回答していた兵庫県内の複数の市町に対し、国や県が強い働きかけをして完了時期を変更させていたことが神戸新聞の取材で分かった。国の12日の発表では、県内の全41市町が「7月末に完了」と回答しているが、実現に疑問を抱く市町も多く、調査の信頼性が問われる。(高齢者ワクチン接種完了時期 国が圧力「7月末で」 神戸新聞 2021/05/14)
首都圏のある市長は4月下旬、総務省幹部から電話を受けて「7月に終わらせるにはどんな手伝いができるか」と繰り返し聞かれたという。医療従事者の確保が見通せず、8月以降と回答した市長は「『7月中にできる』と言わせたい様子だった。達成できなければ、自治体のせいにするつもりかもしれない」と憤る。同様の照会を厚生労働省から受けた首都圏の町長は「数字だけでも接種が進むように見せたくて、圧力をかけているのでは」と語った。(高齢者のワクチン接種「7月完了」に躍起の政府 自治体へ働き掛け強める 東京新聞 2021/05/13)
介護施設の超高齢者にワクチンを機械的に打つことの非人道性
今までも何度か書いてきたが、
特養などの介護施設に入っている認知症の超高齢者に「機械的に」ワクチンを打つのは人道に反するのではないか。
上記の厚労省が出している「死亡例」の中には、
- 102歳 女 2021年4月12日接種 4月16日死亡 基礎疾患:誤嚥性肺炎、慢性心不全(大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症)、マインベース・テオロング・アムロジピン・テルミサルタン(を内服) 死因:誤嚥性肺炎、気管支喘息、心不全
- 90歳 女 2021年4月20日接種 4月22日死亡 基礎疾患:心臓病、高血圧、大動脈解離(H24)、心房細動(R3)、脳梗塞、骨粗しょう症、バイアスピリン、リセドロン等内服 死因:急性心不全、心筋梗塞等
- 101歳 女 2021年4月23日接種 4月26日死亡 基礎疾患:高齢、高度アルツハイマー型認知症 死因:心肺停止
- 90歳台 女 2021年4月19日接種 4月20日死亡 基礎疾患:不明 死因:老衰
- 92歳 女 2021年4月26日接種 4月28日死亡 基礎疾患なし 死因:老衰
- 91歳 女 2021年4月27日接種 4月27日死亡 基礎疾患:アルツハイマー型認知症、慢性心不全・陳旧性心筋梗塞(3年以上前)、胆のうドレナージ術後(2021年1月) 死因:心肺停止
……といった、どう考えても
本人がワクチン接種に対する理解ができていたとは思えないケースも載っている。
心臓病や脳梗塞の既往症のある90代以上の認知症高齢者にワクチンを打ってしまっているのも、にわかには信じがたい。
死因が「心肺停止」とか「老衰」というのも多い(「心肺停止」が「死因」って……?)。この人たちは、介護スタッフや医療者以外、家族とも面会禁止で接触していなかったはずで、
施設外で感染することも人に感染させることもありえない人たちだ。
そういう超高齢者に
機械的にワクチンを投与して、数日後に亡くなったときの死因は「老衰」とか書いているのだ。余計なことをして終末期の苦しみや不安を増加させただけではないのか。
ただでさえ(コロナ以前から)終末期の近い高齢者(特に認知症が進んでいる高齢者)への医療をどうするかは、医療者も家族も介護スタッフも、ものすごく悩みながら対応している。
例えば、終末期にある認知症高齢者が大腿骨骨折した場合、手術を受けさせるべきか、誤嚥性肺炎を悪化させて口から食事が取れなくなったとき、経管栄養を施すべきか。そうした難しい問題に完全な正解はない。本人がすでに判断力を失い、寝たきりに近い状態の場合、医師や家族が代わりに決断しなければならない。本人がいかに苦しまず、穏やかな終末期を過ごせるかを考え抜いた末に決めなければならない。
そうした苦労を無視するかのように、「国が早くワクチンを打てと言っているから打つ」という姿勢はどうなのか。
介護や医療現場の思考停止につながりかねないのではないか。
高齢者がていねいな介護のもとに穏やかな生活を続ける権利を奪い、ワクチンの実験台にしてしまうことにならないのか。
(
「接種後に老衰で亡くなることがある」と伝える? m3.com)
最後のケースの91歳女性の報告には、「接種当日の朝の食事は全量接種するなど著変なし。(ワクチン接種との)因果関係あり」と記されている。
こういう状況の中で、厚労省から各自治体へ、高齢者向けのワクチンが間に合わない場合、医療者用に配布した分を回すようにとの指示があったという(
「ワクチン足りず、医療従事者用を回せ」国が高齢者接種の7月末完了で“脅し” 自治体が反発 2021/05/13 AERA DOT)。

厚労省からの指示書。画像はAeraドット より
政府は何がなんでも高齢者へのワクチン接種を完了させたことにしたいのだろう。
都心に大規模ワクチン接種会場を設営という件にしても、感染を恐れて家に籠もっていた高齢者たちがゾロゾロと長距離移動して東京に集まってくれば、そのほうがよほど感染リスクが高くなるのではないか?
都会に大規模接種会場を作るのであれば、高齢者を集めるよりも、むしろ日頃、都会を行き来している人たち(感染リスクの高い人たち)全般が受けられるようにしたほうが理にかなっているだろう。しかし、IT後進国の日本では、接種したかどうかのデータさえ即時共有ができないために、そうした臨機応変な対応はほど遠い。情けない限りだ。
ワクチン関連は、東京五輪関連以上に、何か書くと総攻撃を受ける気配が濃厚だし、とてもデリケートな問題を数多く含んでいるので、身を守るためには黙っていたいのだが、知らないうちにとんでもない事態に進みそうなので、敢えて書いた。
とにかく、「
現状の各種データを分かりやすく可視化して示してくれ」と言いたい。
判断するための正しい材料を提示してくれ。
分かっているデータがあるのに、わざと見えにくくしているフシがある。メディアも及び腰で、ウケ狙いの記事ばかり飛ばしてくる。
市長が医療従事者枠でワクチンを打ったのはけしからんとか、そんなのはどうでもいい。むしろ、ワクチンを早く打たないと大変なことになると脅したり、ワクチンに少しでも不安があるという言葉を発する者を総攻撃したりする
同調圧力が暴走することのほうが怖ろしい。

同調圧力鍋の中で国民がグツグツと煮込まれていくような社会には大きな悲劇が待っている。それは歴史が何度も証明してきた。
この調子では、1年後、2年後、この国はどうなっているのか。