2012/12/03の2

川内村へ冬支度に(その3) ファミリーマート進出裏話など


大分下がったが、それでも場所によっては3μSv/hを超える値が出る。線量計は警報音出しっぱなし

日が完全に暮れる前に家を後にした。
帰る前に、久しぶりに関守の家に寄ることにした。
関守は獏原人村に続く通称獏林道の入り口に木工工房「獏工房」を構えている。
北海道に移住すると言っていたが、どうなったのか聞きたかったし、原人村のマサイさんに渡すものもあったので、それも預かってもらうために。
ちなみに原人村への郵便や荷物は獏工房に預けられている。
かつて、新人のクロネコ配達員が、知らずに配達のために獏林道を上っていって動けなくなり、救出のために重機が出動する騒ぎになったことがあるそうだ。
それ以来、さすがのクロネコも獏原人村までは入っていかない。

獏工房へはいつも荻というところを通っていく。そこはいわき市なのだが、NHK教育(Eテレ)の特番「ホットスポットを追え」で有名になった。
大津辺山と黒佛木山の間を抜けて行く道の途中、周囲に比べて突出して線量が高いホットスポットがあるのだ。
このホットスポットの存在に初めて気がついたのはマサイさんだろう。
1号機爆発の直後に茨城に避難したマサイさん夫妻だが、その後、鶏に餌をやるために戻ったとき、この道でガイガーカウンターがとんでもない数値を出すのを見てびびったとmixiで報告していた。
その話は『裸のフクシマ』に詳しく書いているので、読まれたかたもいるかもしれない。

雪が深くなってきたので、スーパーマンのいるほうの近道は避けて、久々にこちらの道を

関守は元気そうだったが、なんだか声にちょっと張りがないような気もした。

北海道移住計画の二転三転について話してくれた。
僕らの日光移住までの二転三転を思い出す。
この歳になって、予想外の、しかも理不尽な形での移住というのは、やはり相当疲れる。
そうそう、日光に決まる前、矢板の物件を契約する寸前までいったのだが、風呂場に雨漏りが見つかったのが発端で、延期。その直後に日光の今の家を見つけて、さらにいろいろあって、今の場所に引っ越して来たのだが、矢板市は今、放射性廃棄物の処分場候補地として、国から一方的に「指名」されて話題になっている。
そこも水源地。環境省は一体何を考えているのか。
日本中、どこに行っても安心して住める場所はないのだなあと痛感。

関守の北海道移住計画については、人ごととは思えないというか、心底心配している。
だって、冬は零下20度はあたりまえ。還暦を超えた関守夫婦が、今からそこにゼロから家を建てて……その気力、すごいとは思うけれど、力尽きないのだろうか。
「北海道は寒いし、停電したら生死の問題だし、線量大分下がったようだし、もう諦めてここにいれば?」
と言ったのだが、
「ここにいても何もできないもの。毎日ぼ〜っと過ごしているわけにもいかないから……」
と淡々と言っていたのがずしりと来た。
怒りや悲しみを通り越して、ほんとうに淡々と。
畑も諦めたし、孫が生まれたけれど、ここで一緒に心から笑って遊ぶこともできない。そんな場所にいても仕方がない。やることがない人生は送りたくない……と。

……それを聞いたとき、それ以上は何も言えなかった。
そうなんだよねえ。ほんと、そうなの。どうしようもない。

……生活が生活が、という人ばかり見ているのが耐えられなくなって村を出た。
だから、関守のような感覚の人と話せるとほっとする。
あ〜、やっぱり僕らの感覚っておかしくないよね? 生き甲斐がいちばん大切で、「生活」はそこについてくるもの……というわがままな人生観だけど、それって基本だよね?
みんなわがままだからこそ、自然の中で暮らしたいって、この土地に集まってきたんだものねえ。

ところで、川内村の住民には役場から線量計が配られている。
その数値が妙に低くて、他のどの線量計より低い数字が出るというので、実際に僕らが持っている2台と並べてみた↓

こりゃ変だわ。確かに。悪いけど、関守の家で0.1μSv/hってことはないと思うよ。日光のうちより低い

そんなこんなしているところに、マサイ・ボケ夫妻がちょうど来て、しばし6人で談笑。
この顔ぶれは、震災後の4月28日(あたしの誕生日だ)に、小塚さんちにみんなで集まったとき以来だなあ。
マサイさんとはその後も何度か会っているけれど、関守とはたしかあれ以来だから1年半ぶり。

辛い話ばかりしていても嫌なので、カメラの話やら、EWI4000Sのお披露目やらで盛りあがった。
EWIには、マサイさんも関守も結構興味津々で食いついてきた。やっぱりおっちゃんにとって、メロディ楽器をマスターして演奏するというのは永遠の夢なのだな。

帰り道、村の中心部を通った。
まっ暗でよく見えなかったけれど、マッチ箱のような平屋住宅がズラズラできて、工場ができて、モンペリはファミリーマートの看板を出して開店準備をしていて……ああ、村のこのへんだけが違う世界になっている。

モンペリがファミリーマートになったのは「復興のシンボル」的ニュースとして流れているが、モンペリの店主は、ファミリーマートが来ると聞いて、ついに力尽きて諦めたというようなことを仲間の商店主に告白していたとも聞く
僕も経営者一家から一部の経緯を直接聞いている。

3.11前、モンペリはファミマやローソン、セブンイレブンなど、あらゆるコンビニフランチャイズに申し込んでいたが、すべて「あんな僻地では儲からない」と断られて、やむなく独立採算性システムのモンペリと契約。それも、僻地への仕入れトラックでの商品運搬代として毎月20万円?を支払うという契約を呑まされてのことだった。

3.11後、その仕入れトラックも来なくなり、一時は自分の車で郡山の市場から買った品物を運び入れて店を再開させていた。
若旦那は埼玉の避難先から川内村へ通っていた。
そういう気骨のある一家が村の生活を支えてくれていたのだ。僕もモンペリのおかげでどれだけ助かったか。手数料1通数円のクロネコメール便の扱いを始めてくれと頼んで、実際始めてもらったし。儲からないことでも嫌な顔ひとつせず、村人の生活のために頑張ってきてくれていたモンペリ。彼らは誇り高き人たちだった。

そうやって育て、守ってきた自分の店が、補助金付きでやってくるファミリーマートに変わる。壁にはファミマの緑の線が塗られている。一家はどんな思いでこの光景を見たのだろうか。
原発爆発前は、どんなに願い出ても大手コンビニとは契約もさせてもらえなかった。原発が爆発して、国から金が出て、今まで見向きもしてくれなかった大手コンビニがやってきた。そしてずっと頑張って地元の生活を支えてくれていた経営者一家はついにギブアップ。……なんという皮肉な話だろう。

隣は菊池製作所だから、前よりも客は増えるかもしれない。
そうすればまたメディアでは、復興の嬉しいニュースとして伝えるだろう。

「村は今、すごいことになってるよ」
さっき聞いたばかりの関守の言葉が甦る。
この言葉の意味をきちんと知ることができる人は、村に住んでいた人だけだろう。

まあ、当面、黙って見ているしかない。

帰り道、6区の集会場のモニタリングポスト


数値は低い


これが菊池製作所。飯舘村の希望の光だった企業


飯舘村に残っている菊池製作所の工場に通っているという山木屋太鼓の青年のことを思い出した


ああ、モンペリがファミリーマートに衣替えしている最中だ……


4区の集会場にもモニタリングポストが設置されていた。数値はやはり低い。0.15μSv/hというのは、日光市のうちの中と同程度。
それにしても……なんとも奇妙な空間が出現してしまったものだ。

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