カエル図鑑(3)

ヤマアカガエル

ヤマアカガエル
分布
北海道、九州北西部を除く日本各地。北海道のものはエゾアカガエルとして別種に分類されている。
ニホンアカガエルと生息域が重なるが、名前の通り、比較的山地に多く棲む。

大きさ・容姿
40mm~80mmくらい。比較的生命力が強く、長生きする個体はかなり大きく成長する。
↑川内村時代、我が家の庭に生息していた巨大なヤマアカガエル。一瞬ヒキガエルかと思うくらいの堂々とした体躯。80mmはゆうにありそうだった



喉の下にはっきりした斑模様がある↑


体色は赤茶色だが、明るい茶色から黒に近いものまでかなり個体差がある。
ヤマアカガエルとニホンアカガエルとの見分け方は、背中の測線が、ヤマアカガエルは肩の後ろあたりで折れ曲がっていることと、喉の下にはっきりした斑模様があること。ニホンアカガエルは測線がほぼまっすぐに伸びていて、体表の色もヤマアカガエルよりは明るめ。

産卵
本州に生息するカエルの中では最も早い時期から繁殖活動を始める。温暖な地方や都市部では1月末から2月くらいから産み始める。北関東や東北ではそこまで早くはなく、3月末から4月に入った頃。
ただし、今はその時期に田んぼに水が入っていることはほとんどないので、産み場所に困り、偶然できた水たまりなどに産んでしまうことも多い。
産卵後、産んだ場所の水が凍っても卵は簡単には死なないが、水が干上がればもちろんどうしようもない。
アカガエルは卵から変態までの期間が他のカエルに比べると長い。そのため、水田にいちばん早く産みつけても、変態前に水を抜かれて死滅するオタマジャクシがたくさん出てくる。
気が早い産卵は、田圃が水抜きされるまでの時間競争のため、あるいは成長の早いアマガエルやトウキョウダルマガエルなどのオタマジャクシとの生存競争に勝つためだろうが、それが仇となって、ニホンアカガエル同様、里山での数は減少している。


ヤマアカガエルの卵↑ ニホンアカガエルの卵塊よりダラッとして緩い感じ


孵化~オタマジャクシ時期
水が長期間保たれている環境、例えば沼や池などに産みつけられた卵は、時間をかけてもしっかり孵化・成長を続け、脱落するオタマジャクシは少ない。
ニホンアカガエルとヤマアカガエルの卵塊を見分けるのは非常に難しい。持ち上げたとき、ニホンアカガエルの卵塊のほうが形を保っているというか、プルンプルンと弾力がある。ヤマアカガエルの卵塊は生んだ直後からだらっとしていて、掬い上げると指の間から垂れそうになる感じ。
産んだ直後は透明でキラキラしているが、水を吸ってすぐにぶよぶよになる。
ヤマアカガエルの卵塊はそのままだら~っと広がるように膨張し、アメーバのように形がなくなっていく。

オタマジャクシは、小さいうちはヤマアカとニホンアカの見分けはほとんど不可能ではないかと思える。大きくなるにつれ、ニホンアカガエルのオタマは背中に黒い小さな斑紋が2つ浮かび上がるというのだが、これも認識は難しい。

オタマジャクシはかなり大型化するが、なかなか変態しない。水温が低いと、9月くらいまで時間がかかっているやつもいる。
アカガエルのオタマジャクシは丈夫で、その後孵化したシュレーゲルアオガエルなどのオタマジャクシを食べるものもいる。
水さえ涸らさなければ放っておいてもちゃんと大人になるので、世話入らずのカエルともいえるが、オタマジャクシの期間が長いということは、すぐに水を抜かれてしまう田んぼでは生き延びるのが難しい。

一番大きいのが、ヤマアカガエルのオタマジャクシ。隣の小さいのは後から生まれたシュレーゲルアオガエルのオタマ



少し寄り目なのが特徴

変態
夏の暑い盛り、オタマジャクシはようやく変態する。
ヒキガエルのように一斉に動くということはなく、てんでんバラバラに動く。しばらく水辺などでぼーっとしているが、そのうちに四散する。


手足が生え、これから上陸準備をしようというヤマアカガエルのオタマジャクシ。すでに背中には特徴的な「折れ線」が見えている



変態直後のヤマアカガエル。まだ尻尾が残っている



尻尾が取れてきたが、まだ身体が濡れている



完全に変態して上陸したヤマアカガエル。この頃がいちばん可愛い顔をしている




鳴き声
普段はカラカラっという乾いた声で鳴く。パーカッション楽器のギロの音色に似ている。
繁殖のときは、もう少し色気のある甲高い声で、おしゃべりをしているような声にもなる。

性格
ヤマアカガエルは力強く生きている。長いオタマジャクシの時間をじっくりと生き抜き、カエルになってからも「普通に」サバイバルライフを続ける。
アマガエルのように窓ガラスに張り付いて灯りに群がる虫を狙うような積極性はないが、モリアオガエルのように森の樹上高くのぼるほどマッチョ系でもない。普通にそのへんで暮らし、普通に死んでいく、「普通のカエル」という印象。
実は、アカガエルの仲間は「もっともあたりまえのカエル」で、現在の属名・種名による分類法で、最初にカエルに与えられた種名がヨーロッパアカガエルだったそうだ。トノサマガエルやツチガエル、ウシガエルもアカガエル科に分類されている。要するに「カエル界の一般庶民代表」とも言える。

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ヒキガエル科

アズマヒキガエル

アマガエル科

ニホンアマガエル

アカガエル科

ヤマアカガエル  ニホンアカガエル タゴガエル  トウキョウダルマガエル  ムカシツチガエル/ツチガエル

アオガエル科

シュレーゲルアオガエル モリアオガエル

ヌマガエル科

 ヌマガエル(「アカガエル科」としているものもある)


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