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のぼみ~日記2019

2019/03/27

棚倉・浅川を再調査(12)松浦家の墓地



急斜面をぐいぐい上っていく吉田さん。左上が墓地。

さて、いよいよ日没が迫ってきたので、あと一か所だけと絞り込んで、松浦家の墓地に行ってみることにした。
ここには寅吉が彫った燈籠があるという。
吉田さんは「師匠の利平が世話になった松浦家だから、寅吉がお礼に彫ったのではないか」という。どういうものか見たかったのだが、なんと、3.11で倒壊していて、どんな姿のものだったのかも、寅吉の銘も確認できなかった。
しかし、松浦家の墓を実際に目にすることができたのはよかった。
大庄屋で大きな屋敷を構えていたのに、墓はかなり質素なものだった。
吉田さんは、この墓地全体が松浦家のものだと思っていたらしいが、生田目家など、他の家の墓もあり、さらには「有縁無縁の墓」を集めた一画もあって、共同墓地として存在していた。
松浦家の土地だったのだろうが、独占せず、無縁仏のような古い墓石にもきちんと新しい墓碑を作っているところに感心させられた。
大庄屋松浦家は、記録に残っているだけでも、寛政10(1798)年の浅川騒動のときと、明治元(1868)年の世直し一揆のとき、2回は打ち壊しにあっている。
周辺の大庄屋や庄屋に比べると松浦家は信頼のあった家系らしいが、大規模な一揆だと、すべての大庄屋の家が襲われ、否応なく巻き込まれた感がある。
特に、慶応2(1866)年の「蒟蒻騒動」(南郷20か村の蒟蒻生産農家が、自由販売を要求して各村の名主宅を打ち壊した事件)の首謀者8名の助命嘆願に奔走し、ときの代官・多田銃三郎に掛け合ったときの筆頭大庄屋が松浦家第9代の孝右衛門である。自分の村で起きた騒動でもないのに奮闘して助命嘆願し、そのうちの一人は身元引受人として身柄を引き取ったりもしているのに、わずか2年後には、戊辰戦争の混乱にのったような一揆で打ち壊しにあうのだから、たまったもんではない。
戊辰戦争で次々に焼き討ち、虐殺にあって精神状態がおかしくなってしまった空気感が伝わってくるような話だ。


墓地の入り口付近にある「松浦家之墓」と彫られた墓石。以外と質素なものだった。



これが問題の燈籠。完全に倒壊していて、もはや何が何だか分からなくなっている。



草をかき分けて銘を読もうとしたが、奉納者名の一部しか分からなかった。しかし、これを見る限り、松浦家単独での奉納ではなさそうだ。



墓地内には、誰のものだか分からない古い墓、生田目家の墓なども同居している。



戒名だけで誰の墓だか分からなくなっている墓も、集められて新しい墓碑が添えられている。お金のかかることだろうに、立派だ。



「松浦家之墓」の周囲には、個人の墓も建っている。子どもが親の墓を独立して建てているようだ。





11代の松浦勇が父親の10代松浦勇弥の功績を墓石に記している。
10代は9代の長男で、妻は石射の姉である。27年余村長を無報酬で歴任し基本財産を蓄積して村税を全廃し、また村有林を設けて累代第一の村治功労者である。資産を積んだのも一番で、長徳寺本堂、庭渡神社の造営から小学校を今日のごとく大拡張し、村内主要道路を改修したのも実にこの人である。三男四女を成人させた。
11代 勇 誌


松浦家は元禄年間(1688年~)淺川より山白石村に移って庄屋となり、農業、酒造業を兼営した名家である。
江戸末期からの3代をざっと紹介すると、

松浦考右衛門(九代) 
 慶応2(1866)年蒟蒻騒動の翌年4月11日、石川町下泉庄屋・謙次、形見村庄屋・喜右衛門らと塙に集合して善後策を協議。考右衛門が首謀者一人・山下勘次平の身柄を預かる。
 
十代・松浦勇弥
万延元(1860)年生まれ。大庄屋・松浦孝右衛門(九代)の長男 戊申戦争時は8歳
福島県会議員、山白石村長、福島県多額納税者、福島県農工銀行取締役、農業
妻・ミヨは文久元(1861)年、石射兵三郎の長女として生まれる。一つ下の弟の石射文五郎は福島県農工銀行専務、同県会議員、衆議院議員(立憲政友会)、九州石炭鉱業取締役。

長男・松浦(11代) 明治13(1880)年生まれ
従七位勲六等功五級
大正9(1920)年に松浦家を相続。福島県多額納税者、山白石村長。

……となる。
最近、9代孝右衛門が残した戊申戦争時の日記が発見され、「庶民の側から見た戊辰戦争の実態」が分かる資料として注目された。

とにかく戊申戦争時にはこのへん一帯はひどい目に合っている。
権力者の無能によって戦争が引き起こされるのは怖ろしい。もっと怖ろしいのは、そうなったとき、庶民の生活だけでなく、精神状態が破壊されることだろう。
現代日本に暮らす我々は、そこまでの恐怖をまだ味わっていない。しかし、何かの拍子でそうなってしまうことを、歴史は教えている。



並んだ石仏に見送られながら、墓地をあとにした。

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